2025年末から2026年頭にかけては、ブラウザエージェントのセキュリティ強化、グローバル研究トレンドの総括、企業向けのエージェント競技会、そして日本発のAI学習プログラムまで、次の一年を占う動きが一気に表面化しました。本記事では、OpenAI・Google・AWS・Microsoft・Amazon Scienceの5つのトピックから、2026年に押さえておきたい方向性を整理します。
OpenAI:ChatGPT Atlasを自動レッドチームで守る「プロンプトインジェクション」対策強化
2025-12-22:OpenAI/ChatGPT Atlas・ブラウザエージェント
要するにどういうこと??
ChatGPT Atlasのブラウザエージェントに対して、RLで訓練した自動攻撃者によるレッドチーミングを常時回し、プロンプトインジェクションを先回りで見つけて防御を更新していく「攻防一体」の仕組みを入れた、という話と読み取れます。
OpenAIは、ブラウザ内でユーザーの代わりに操作を行う「ChatGPT Atlas」のエージェント機能に対し、プロンプトインジェクション攻撃への防御を大きく強化したことを報告しました。
プロンプトインジェクションとは、メールやWebページなどコンテンツ側に悪意ある指示を埋め込み、エージェントに本来のユーザー指示と異なる行動をとらせる攻撃手法です。
記事では、内部で構築したLLMベースの自動攻撃エージェントに強化学習を使って「攻撃スキル」を学習させ、ブラウザエージェントに対する高度なマルチステップ攻撃を大量に生成・試行させる仕組みが紹介されています。
攻撃エージェントはシミュレーターを使い、被害エージェントの「思考過程」や行動ログをフィードバックにして攻撃パターンを洗練させます。
その結果得られた新しい攻撃クラスに対して、Atlas側のモデルを追加学習し、ルールやガードレールも含めた防御をすばやくアップデートする「高速なラピッドレスポンスループ」を回しているとのことです。
ブラウザエージェントが日常業務や決済など高リスクな操作を担うようになるなかで、「攻撃側にも最先端のLLMとRLを使ったうえで、それをさらに上回る防御サイクルを回す」という、今後のエージェントセキュリティの標準像を示したアップデートと言えます。
参照元:Continuously hardening ChatGPT Atlas against prompt injection attacks
Google:8つの重点領域で振り返る「2025年AI研究の年次レビュー」
2025-12-23:Google/AI研究の年次総括

要するにどういうこと??
Google Researchが2025年の成果を8つの重点領域ごとに整理し、論文から製品応用までを俯瞰することで、今後数年の研究・事業の焦点をコンパクトに示したレビュー記事と思われます。
Google Blogでは、2025年におけるGoogle Researchの取り組みを「8つの研究領域」という切り口で振り返る年次レビューが公開されました。
個々のプロジェクト紹介に終始するのではなく、「どの領域でどのような突破口が開かれたのか」「その成果がGoogle製品やオープンな研究コミュニティにどう波及しているのか」といった視点でまとめられているのが特徴です。
生成AIやマルチモーダルモデル、責任あるAIや安全性、ロボティクスやヘルスケアなど、多様な分野を一つのストーリーとして接続し、モデルアーキテクチャ・評価手法・インフラといった基盤技術の進化と、実世界アプリケーションへの橋渡しの両面が紹介されています。
ビジネスサイドにとっては「どの領域がすでに実務投入フェーズにあり、どこがまだ研究色が強いのか」を見極める材料になり得るコンテンツであり、自社のPoCテーマ決めや中期技術ロードマップのインプットとして活用しやすいまとめになっています。
また、研究者やエンジニアにとっても、自分の専門外の領域で何が起きているかを短時間でキャッチアップできるハブとして機能する構成で、2025年のAI研究の地図をざっくり頭に入れておくのに適した記事です。
参照元:Google’s year in review: 8 areas with research breakthroughs in 2025
AWS:AWS AI Leagueで学ぶエージェント構築とモデルカスタマイズ競技
2025-12-23:AWS/エージェンティックAI&モデルカスタマイズコンペ
要するにどういうこと??
AWS AI Leagueというコンペ形式のプログラムを通じて、Bedrock AgentCoreやSageMakerを使ったエージェント構築・モデル微調整を実戦的に学べる場を整え、企業のAI開発力を底上げしようとしている、とみられます。
AWSのMachine Learning Blogでは、エージェント構築とモデルカスタマイズに特化したコンペティション「AWS AI League」の概要が紹介されています。
プログラムは、AWSエキスパートによる2時間のハンズオンから始まり、その後は参加者が自分のペースで実験・改良を進め、re:Inventでのゲームショー形式のグランドフィナーレで集大成を披露するという3ステップ構成です。
技術面では、Amazon Bedrock AgentCoreを使って複数のサブエージェントやツールを組み合わせたマルチエージェントアーキテクチャを設計し、迷路状の仮想環境のなかでタスクをこなさせる「エージェンティックAIチャレンジ」が目玉の一つです。
ブラウザ操作やコード実行、不適切コンテンツ対応など、実務さながらの課題に対し、エージェントの行動計画・ツール呼び出し・安全性を総合的に設計する必要があります。
加えて、SageMaker Studio上での最新のファインチューニングレシピを使い、大規模モデルを上回るドメイン特化型モデルを作る「モデルカスタマイズチャレンジ」では、LLMによる自動ジャッジがリーダーボードを通じて即時フィードバックを返す仕組みが説明されています。
競技のかたちを取りつつ、企業が自社のユースケースに近い課題でエージェント・モデルの設計スキルを磨ける点が実務上の大きな価値と言えるでしょう。
Microsoft:冬休みに始める「AI筋トレ」で社員のAIリテラシーを底上げ
2025-12-23:Microsoft/日本向けAI学習プログラム
要するにどういうこと??
日本マイクロソフトが、短時間の演習を積み重ねる「AI筋トレ」形式のプログラムを提示し、マニュアル読解よりも実践重視で社員の生成AI活用スキルを底上げしようとしている、という取り組みと思われます。
Microsoftの公式メディア「Microsoft Source Asia」では、日本向けに「AIを学ぶならマニュアルで?冬休みに『AI筋トレ』をはじめよう」と題した記事が掲載されました。
形式的な操作マニュアルを一度読むだけでは、生成AIの活用が日々の業務に根付かないという問題意識から、短時間のミニ課題を継続的にこなしていく「筋トレ」型の学び方を提案している点が興味深いところです。
具体的には、日常業務を想定したプロンプト作成や情報整理、メール文案の改善など、小さなタスクを繰り返しAIに投げて試すことで「AIと協働する感覚」を身体で覚えていくことが重視されています。
技術的な新規性というよりも、人材育成とチェンジマネジメントの観点から、AI導入を一部の有志に任せるのではなく、幅広い社員にとっての「当たり前のスキル」にしていくための仕掛けづくりに焦点が当たっています。
日本企業では「忙しくて研修に時間を割けない」「一度の集合研修では定着しない」といった課題が多いなか、冬休みなどのまとまった時間を使ってセルフペースで実践するプログラムは、現実的なアプローチとして参考になるでしょう。
Amazon Science:2025年人気記事トップ10が示す企業AI研究の関心領域
2025-12-29:Amazon Science/2025年人気研究トピック総括
要するにどういうこと??
Amazon Scienceの2025年人気記事トップ10から、Chronos-2やOcelot量子チップ、エージェントAIなど、企業研究がどの領域に注力しているかを一望できる「研究トレンドの鏡」が示された、というように読み取れます。
Amazon Scienceの「The 10 most viewed blog posts of 2025」では、その年に最も読まれた10本の技術記事を通じて、Amazon Researchが注力しているテーマが整理されています。
トップに挙げられているChronos-2は、単一系列の統計モデルから、任意の時系列タスクをゼロショットで扱える基盤モデルへと進化した予測手法であり、複数の指標を同時に扱うマルチバリアット予測や、プロモーション・天候など外部要因を組み込んだ需要予測を可能にする点が強調されています。
また、猫状態を用いた誤り訂正を行うOcelot量子チップは、少数の物理量子ビットで長寿命の論理量子ビットを実現するアーキテクチャとして注目を集めました。
さらに、エージェント同士の情報共有や戦略的なやり取りを扱う「agentic AIの科学的フロンティア」を論じた記事など、単なるプロダクト紹介に留まらない研究色の強いトピックが並んでいます。
これらを俯瞰すると、Amazonの研究が「基盤モデル+時系列などの構造化データ」「量子計算と古典AIの接続」「エージェント同士の相互作用設計」といった、次世代の大規模システムを支える層に重心を置いていることが読み取れます。
実務的には、サプライチェーンや需要予測、金融リスク管理など、長期的に高精度な予測が求められる領域の担当者にとって、Chronos-2周辺は特にウォッチしておきたいラインと言えるでしょう。
今回の総括として
今回の5トピックを並べてみると、2026年に向けたAIのテーマは「エージェント×安全性」「基盤研究の広がり」「モデルカスタマイズとコンペティション」「現場のAIリテラシー向上」「企業研究の長期テーマ」の5本柱に整理できそうです。
まずはOpenAIやAWSが示すように、エージェントやカスタムモデルを「安全かつ素早く回す」ための土台づくりが重要になります。
そのうえで、GoogleやAmazon Science、IBMなどの研究トレンドをウォッチしながら、中長期で自社が勝てるドメインを見極め、Microsoftの「AI筋トレ」のような継続的学習プログラムで人材面を整える——というのが、2026年の現実的な打ち手になるでしょう。






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